それは火事のようなもの
こうなったら医師の出番
― ストレス反応について ―
この記事の要点
ストレスによる心身の不調を抱えながらも受診のタイミングを逃してしまう方は少なくありません。
不調は徐々に進行し、「ゆでガエル」のように本来の調子がわからなくなりやすいのが特徴です。
ストレス反応は火事と同じで、早めに対処しなければ回復しづらくなります。
つらさを自覚する前の体調変化や行動の変化に気づくことが、適切な受診タイミングを判断する重要なポイントとなります。
私は、よくストレス反応によるメンタルの不調を「火事」に例えてお伝えします。
ストレスをお感じの状況があり、そのことでお悩みである、という段階では、まだ医師の出番というには早いかもしれません。 悩みの相談に乗ってくれる人を探す、ストレス状況を解消する手立てを検討するといった、比較的一般的な対応で辛さが緩和し、 心身の症状が出るに至らず回復するのであれば、それに越したことはありません。
しかし、熱源(ストレス)により焦げ付き始めた程度の段階(悩みから症状へ)を超え、 火が燃え上がってしまっているとき(心身が強いストレス状況にさらされ反応を起こしているとき)に、 火を消さずに放置するようなことをしていたら (=ストレス反応をそのままにして、対処行動をとらずにいたら)、 火事がどんどん進んでいってしまいます (適応障害、うつ病、パニック障害などの疾患と診断できる状態へ)。
後になって火がようやく消えても、そこは元通りになっているのではなく、焼け跡になっている(症状が長引く)。 その状態で10年単位で症状を引きずり、パフォーマンスが上がらないままになる、というのはざらにある事です。
私は医師として、これをなんとかして避けていただきたいと考えています。 対処が遅れると薬物療法を行っても期待する効果が出づらくなってしまうこともあり、 適時適切に受診いただきたいと考えています。
「お悩みごと」のレベルを超えて、 「神経系の変調と見られるサイン」が目立ちだしたら、 「火事が発生している」とみて、治療を開始したいところです。
例えば、
- 不眠
- 朝起きづらい
- 疲れが抜けない
- 気分が晴れない
- 何もする気がしない
- ぼーっとして考えられない
- 会話の内容が頭に入ってこない
- 涙もろくなった
といった症状が出はじめ、徐々に頻度が増えてきたら、 それ以上受診を遅らせないことをお勧めします。
ここが難しいところで、症状が目立たない日もあるために、 「まだ大丈夫だろう」と受診を遅らせてしまう方が少なくありません。 本来はどんな調子だったのかが徐々にわからなくなっていく 「ゆでガエル化」もこの時期に見られます。 好調不調の波を繰り返しながら徐々に悪化していくこの時期を長引かせず、 不調が常態化する前に受診することが大切です。
悩みが焦げ付き始めた程度の段階であれば、 お薬も効きやすく、 「薬ってこんなに効くの?」と驚かれることもめずらしくありません。 (ケースバイケースですが)本格的な抗うつ薬等まで使わなくとも済む可能性も高まります。
火事が起きたら火を消す。当たり前のことのように聞こえます。 しかし、その火元であるストレス状況から逃げられない方、 逃げようとしない方もおられます。
- 責任感のために逃げられない
- 代わりの人材がおらず逃げられない
- 転職先をイメージできず逃げられない
- 周囲からどう見られるか気になって逃げられない
- 困った客が来ることを拒めない
- 逃げようがない人間関係
・・・「他の選択肢をイメージできないため」逃げられない、 逃げようとしないように思える方々が少なくないように思います。
また、
- 自力で克服したい
- 薬を飲みたくない
- 受診すると自分の弱さを認めるようで嫌だ
- 人に相談してどうなるものでもない
といった考えが、受診の遅れにつながる場合も少なくありません。 手当が遅れると、回復に時間がかかり、 生活上の支障が大きくなり、 長期に渡ってパフォーマンスが出なくなってしまう危険性も高まってしまいます。
もしこれを読まれているあなたが、今はストレス状況から逃れられなくても、 通院することが可能であれば、
- ともかく睡眠を充実させる
- 悩み事を引きずって、考えすぎてしまい、思い出すたびにダメージを受け続けること (ぐるぐる思考、思考の反芻)にブレーキをかける
- 回復に役立つ取り組みを増やす
- 必要であれば薬物療法を行う
といった
回復のための手立てを検討するきっかけを得ることができるかもしれません。
ぜひ、大火事になってしまう前に、 深い傷を負ってしまう前に、 早すぎず、遅すぎないタイミングでの受診をご検討なさってください。
まとめ
- ストレスによる心身の不調は初期には見逃されることがある
- 不調を放置すると回復に時間がかかる
- ストレス反応は火事のように早期対応が重要
- 休日の過ごし方や睡眠の質の変化は不調のサイン
- 行動や体の変化から受診タイミングを見極めることが大切