緊張が取れない、
リラックスできない、息苦しい
不安緊張へのアプローチ

お忙しい方にも読みやすいよう、できるだけ簡潔にお伝えします。

「認知行動療法」についてご存知でしょうか。不安やパニックなどに対する代表的な治療法ですが、その中で重要な位置を占めるのが、 不安や緊張を和らげるためのリラクセーションです。代表的なものとして、呼吸法漸進的筋弛緩法があります。

呼吸法

身体には、息を吸う時に緊張し(交感神経が優位になる)、吐く時にリラックスする(副交感神経が優位になる)という仕組みがあります。そのため、緊張を解除するためには、「吸うことよりも吐くことをより長く行い、意識する」ことが基本になります。

たとえば、「7-11法」という方法があります。7数えながら吸い、11数えながら吐く方法です。大切なのは、数字そのものよりも、吐く時間を吸う時間より長くすることです。慣れてきたら、ご自分に合ったペースで、さらに吐く時間を長めにしてもよいでしょう。

不安緊張が体の症状になって表れ、胸が苦しい感じがする、空気が入ってこない感じ、息が吸えない感じがする、と感じる方はとても多くおられます。一方、先ほどの身体の仕組みに照らすと、息を吸おうとすればするほど、かえって緊張が高まってしまいます。

そのため、やや極端な表現ではありますが、「息は、吸わなくて良いのです」とお伝えすることもあります。空気は吐きさえすれば、後から勝手に入ってくる。だから、吸うことは忘れて、吐く方だけを意識する、ということです。「吸わなくていい」、さらには「吐き切る」「吐ききったところで少し間を置く」といったことを意識することも「効かせやすくする」ポイントになります。

腹式呼吸もよく取り上げられる方法です。胸や肩を大きく動かすのではなく、お腹を使い、横隔膜を動かして呼吸するやり方です。とてもシンプルで、始めるハードルも高くありません。ただ、その一方で、「やってみたけれど、あまり効果がわからない」と感じてやめてしまう方も少なくありません。そうした方に一つお勧めしたいのは、呼吸に意識を向けるための工夫を増やすことです。たとえば、吐くときに口をすぼめて、細く長く「ふーっ」と吐く。これは「ストロー呼吸」と呼ばれる方法です。あるいは、鼻から吸った息が、頭頂部を通って背中を下り、おしりの方を回ってお腹に戻り、口から出ていく――そんなふうに、呼吸の流れをイメージしてみるのもよいでしょう。呼吸のことだけを考えるようにする。余計なことを考えるゆとりをなくす。「今、ここ」にある体の感覚だけにフォーカスする。そうすることで、不安や緊張をより効果的に和らげやすくなります。

ここで挙げた方法は、私が外来で患者さんによくお伝えしているものです。ただし大切なのは、ご自身に合った方法を見つけること、そして必要に応じて自分に合うようにアレンジすることです。一人ひとりが、ある意味では「自分の体の専門家」でもあります。自分の体感を信じて、工夫してみることで、「自分中心の感覚」を取り戻すこと――世間の波にもまれ、日々役割を問われる中で、時には自分を見失いかねないような「働くひと」にとって、これもまた、大切なストレス対処の一つだと思います。

なお、不安緊張が高まり、徐々に呼吸が荒くなり、止まらなくなる「過換気症候群」が生じることがあります。これに対し、かつて「ペーパーバッグ法」といって、袋を口に当てて呼吸する方法が行われていた時期がありました。しかし、この方法は現在では一般に推奨されておらず、場合によっては有害とされています。医療機関でも今なおこの方法を提案される場合があるようですが、「何かすがる方法がある」という安心感や、いわゆるプラセボ効果があるにしても、実際に効果を期待できる方法を試みていただく方がよいでしょう。

筋弛緩法

もう一つの代表的なリラクセーションの技法が、漸進的筋弛緩法です。人の筋肉は、普段からある程度緊張しています。それをいったんしっかり緊張させ、しばらく保った後で、だらーんと緩める。すると筋肉の緊張のベースのレベルが、以前よりも低くなる。そこに、筋肉のリラクセーションだけではなく、精神的なリラクセーションも生じる、ということを利用した方法です。

「漸進的」というのは、少しずつ進める、という意味です。例えば、まず拳をぎゅっと握り、ゆっくりと10数え、その後力を抜く。次に、再び拳を握り、そのまま上腕の筋肉にも力を入れ、同様にゆっくりと10数えてから緩める。このように、緊張させる筋肉の範囲を、拳、上腕、肩、お腹、背中、太もも、足、最後には顔、と少しずつ広げて行きます。慣れてくると、最初から全身の筋肉を緊張させて、その後一気に弛緩させるだけで、すとんと睡眠に入ることができる、というような方も中にはおられます。

仕事終わりにジムに立ち寄って筋力トレーニングをすることも、可能な方にとってはよい方法です。筋力トレーニングで行っていることは、見方を変えれば、筋弛緩法の連続とも言えます。身体にしっかりと刺激を入れることで、昼間の仕事モードから切り替える、「自分中心の感覚」を取り戻す、つらい思考を引きずるのを断ち切る、そういった効果も得られるでしょう。筋力トレーニングのメリットのひとつは、呼吸法に比べてその動作が視覚的でわかりやすいことです。

注意事項

  • ①効果には個人差があります。
  • ②全身に一気に強い力を入れる方法は、高血圧の方、循環器に問題のある方等にはリスクが伴いますので避けて下さい。
  • ③痛みが強い部位、けが、術後、筋骨格系の問題がある部位では無理をしないで下さい。
  • ④呼吸法は、循環器や呼吸器に問題のある方はリスクが伴いますので医師にご相談下さい。
  • ⑤呼吸の乱れや強い不安が続く場合は、セルフケアだけで解決しようとせず、早めに専門の医療機関を受診することをご検討下さい。